岩手県盛岡市梨木町の内科・循環器科 おおひら内科・循環器科クリニック

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岩手経済研究(2006年10月号)

「閉塞性動脈硬化症について」
本当は怖い足(脚)の血管疾患!


はじめに
 「常日頃、足が冷えたり、足にしびれを感じることはありませんか?」 「少し歩いただけでも足が痛くなることはありませんか?」「そして何より、高血圧症、 高止血症などの生活習慣病を放置してはいませんか?」そのまま放っておくと、大変なことになりますよ...。 おそらくどこかで聞いたことがあるような台詞かと思います。 実際に放送されたかどうかは分かりませんが、本稿では、 動脈硬化性疾患の中で頻度が高く、介護保険上の特定疾病の 一つにも定められている閉塞性動脈硬化症という病気について紹介します。

閉塞性動脈硬化症とは
 閉塞性動脈硬化症は、四肢(主に下肢)へ血液を送り届けている動脈が、動脈硬化により徐々に狭くなったり(狭窄)、または詰まったり(閉塞)したために、四肢に十分な血液が行き渡らなくなった病気です。高齢の男性に多く、喫煙や高血圧症、高脂血症や糖尿病ならびに肥満などの動脈硬化性危険因子の存在が誘因になります。近年、食生活の欧米化や人口構成での高齢化などによる動脈硬化の増加に伴い、閉塞性動脈硬化症は増加の一途を辿っています。

閉塞性動脈硬化症の症状
 閉塞性動脈硬化症の症状は、その程度(重症度)によって、表1のように分類されます。軽症では主に冷感やしびれ感をきたす程度です。中等症になると、ある一定の距離を歩いた際に、下肢の筋肉痛のために歩行を停止せざる得なくなり、数分休むとまた歩行が可能になるという症状、いわゆる間歇性跛行を生じます。本症の特徴的な症状であり、また、本症が「足の狭心症」ともいわれる所以です。さらに重症になると、安静にしていても下肢に疼痛(安静時疼痛)を自覚したり、足にただれた傷(潰瘍)ができたり、腐ったり(壊死)するようになります。

表1 症状による重傷度分類(Fontaineの分類)

重症度 症状
I度 冷感、しびれ感(無症状)
II度 間歇性跛行(歩行時の痛み)
III度 安静時疼痛(安静での痛み)
IV度 潰瘍(ただれた傷)、壊死(腐る)

※III度とIV度をまとめて、重症虚血肢と呼びます。


閉塞性動脈硬化症の診断
 自覚症状と身体学的検査(主に触診:末梢動脈拍動の触知による判断)より、おおよその診断が可能です。次に、四肢の血圧値から足関節血圧/上腕動脈血圧比(ABPI)をみることで診断できます。最近では、四肢の血圧を自動的に同時に測定できる血圧脈波検査装置も普及しており、短時間に、簡便に測定することが可能になっています。診断の確定には、超音波検査法や磁気共鳴画像診断法(MRI)などの画像検査を用います。これらの検査法は 、患者さんの身体に負担になることはほとんどありません。外科的治療を前提とする時には血管造影を行うことがあります。

閉塞性動脈硬化症の治療
 本症の背景にある動脈硬化性危険因子への対策が基本になります。また、日常生活に支障をきたさない程度の症状の患者さんには、内科的治療を選択します。症状の強い中等症以上の患者さんには、主に外科的治療を考慮します。しかし、極めて重症な場合には、下肢の切断を余儀なくされることもあります。

閉塞性動脈硬化症患者さんの生命予後
 閉塞性動脈硬化症は全身の動脈硬化症の一部分症であり、他の動脈硬化性疾患を合併することが多く(図1 拡大図はこちらです)、その予後は不良とされています。しかも、下肢症状が重症になるほど、予後も悪くなります。脳血管疾患や虚血性心疾患ならびに大動脈瘤破裂などによる血管疾患が、死因の75%を占めるといいます。合併疾患が生命予後に大きく関わってきますので、「年のせい」「命に危険のない、足の病気だから」と思い込んでいてはいけません。生命予後の向上のためには、本症はもちろんのこと、重篤な合併疾患の精査が重要となります。

「足の痛み」は全身の動脈硬化症の危険信号
 閉塞性動脈硬化症の治療目標は、下肢症状の改善と生命予後の向上に尽きます。十分に対応するためには、合併疾患を含めた、本症の早期発見と早期治療が必要です。日頃から自分の足に注意を払い、「・・・ちょっと気になるかな?」ということがあれば、早めに医師に相談して下さい。

診療方針

新聞記事(岩手日報)

新聞記事(岩手日報)

岩手日報に掲載されたものです。
拡大図はこちら

新聞記事(岩手日報)

2006年(平成18年)12月1日